気づき

便利さの代償を、考えたことはありますか?

蒼井七菜子

社会人経験6年で転職7回、休職を重ねてきましたがメンターとの奇跡のご縁に恵まれました。その月暮らし余裕なし会社員から家で独りで経済的自由を目指して学びに取り組んでいます。心穏やかにひっそりと愛と調和に満ちた人生へ。

ボタン一つで、何でも家まで届く。

話しかけるだけで、家電が動く。

顔を見せるだけで、ドアが開く。

私たちの暮らしは、かつてないほど便利になりました。

けれど、ここで一度だけ立ち止まって考えてみてほしいのです。

その便利さには、代償はないのだろうか、と。

便利になるたび、私たちは何かを手放している

便利になるたびに、私たちは静かに何かを手放しています。

料理をしなくなった。

道を覚えなくなった。

電話番号を覚えなくなった。

手紙を書かなくなった。

一つひとつは、些細なことに見えるかもしれません。

「その分ラクになったんだから、いいじゃないか」と。

確かにそうです。

でも、便利さが奪っているのは、単なる「手間」だけではないとしたら——どうでしょう。

手放しているのは、手間そのものではなく、私たちが人間として持っていた能力なのです。

使わない能力は、退化する

これは、筋肉とまったく同じ仕組みです。

使わない能力は、確実に衰えていきます。

ナビがなければ、目的地にたどり着けない人が増えています。

計算機がなければ、簡単な暗算ができない人がいます。

久しぶりにペンを持つと、あれほど書けたはずの漢字が出てこない——

そんな経験は、もはや数え切れないほどの人が抱えているはずです。

便利さに身を委ねれば委ねるほど、人間は少しずつ弱くなっていく。

考えてみれば、これは恐ろしいことではないでしょうか。

進化と退化は、同時に進んでいる

私たちは「テクノロジーが進化している」とばかり思っています。

けれど本当は、その裏側で、もう一つのことが同時に起きています。

テクノロジーの進化と、人間の退化。

この二つは、いつも並んで進行しているのです。

機械が賢くなるその同じ速度で、私たちは自分の足で歩く力、自分の手で書く力、自分の頭で考える力を、少しずつ機械に明け渡している。

便利さの恩恵を受け取りながら、その代金を「自分の能力」で支払っている——そう言い換えてもいいかもしれません。

すべてを拒否する必要はない。ただ、時々「不便」を選ぶ

とはいえ、ここで「文明を捨てて山にこもれ」と言いたいわけではありません。

便利さのすべてを拒否する必要など、まったくないのです。

提案したいのは、もっとささやかなことです。

時々、あえて不便を選んでみてください。

近所までなら、ナビを切って自分の勘で歩いてみる。

メモを、スマホではなく手書きで残してみる。

簡単な計算を、頭の中だけでやってみる。

小さなことからでいいんです。

たとえば、手書きのノートから

何から始めればいいか迷うなら、たとえば「手書きのノート」はとてもおすすめです(私も実践しています!)

毎日きっちり書く必要はありません。

その日に感じたことや思ったこと、ちょっとした気づきなどなど。

そんな些細なことを、気が向いたときにふっと書き留める。

それだけで十分です。

実際にやってみると気づくのですが、手書きには不思議とリラックス効果があるような気がしています。

ペンを走らせるあの少しゆっくりとした時間が、張りつめた気持ちをほどいてくれる。

スマホに打ち込むのとは、明らかに違う感覚があるのです。

ときには「自分の字って、こんなだったかな」と、ちょっと笑ってしまうこともあります。

きれいに整ってはいなくても、その日の気分がにじんだ字は、まぎれもなく今の自分そのもの。

急いでいれば字も急き、心が落ち着いていれば線も穏やかになる。

手書きの字には、その時の自分の内側がそのまま映し出されているような感覚があります。

そして、せっかくならお気に入りのノートを選んでみてください。

「この紙に書きたい」と思えるノートが手元にあるだけで、書くこと自体がちょっとした楽しみに変わります。

道具にこだわる——それもまた、便利さに流されず、自分の手の感覚を取り戻すための、立派な一歩です。

それが、あなたを人間として保つ「運動」になる

自分の足で歩き、自分の手で書き、自分の頭で考える。

それは、あなたが人間としての能力を保つための、最低限の「運動」です。

筋肉が使わなければ衰えるように、人間らしさもまた、意識して使わなければ静かに失われていきます。

便利な時代だからこそ、ときどき不便を選ぶ。

その小さな選択の積み重ねが、十年後のあなたを、しっかりと「自分の足で立てる人」にしてくれるはずです。

さて、今日はどんな不便を、一つ選んでみますか?

 

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